『子どもの権利条約アンケート』(子ども対象)から考える

   山梨県教育研究所  

はじめに

 山梨県教育研究所教育問題研究委員会では、2002年から実施される新教育課程・完全学校5日制を目前に教育改革が進む中、「子どもを中心にすえた『教育観』『学校観』を持ち、教育実践を進めていくことはとても重要なことである」と考えた。さらに、このような教育実践を進める上で、「子どもの権利条約」(以下「条約」)を支柱的な役割を果たせるものととらえ、調査・研究の中心課題として、その学習と啓発活動に取り組んできた。
 1998年度は、教職員を対象にした「権利」アンケートを実施した。今年度は、昨年度のアンケートをふまえるとともに今後の実践につなげていくために、子どもを対象に「条約」アンケートを実施した。アンケートに答えてくれた子どもたちは、小学5年生が1062人、中学2年生が1071人、合計2133人である。
 今回のアンケートの集計結果については、各項目ごとに若干の分析や考察を加えてある。明確な分析は加えられないものの、各学校における教育実践をすすめていく上で実態把握に努めていただきたい視点や論議していただきたい観点について、4点にしぼって提起させていただくことにする。


1.「『子どもの権利条約』を知らない子ども70%以上」をどう受け止めるか。 
[問1]の結果を見ると、小学5年生の80%以上、中学2年生の70%以上の子どもたちが、「条約」を知らないと答えている。
 昨年度の教職員向けのアンケート結果においても、「『条約』に関して子どもたちに話をしたことがない。」と答えた教職員が70%を越えるという結果が出ている。「条約」が教育現場に入っていかない原因として「教職員の意識の問題」がよく言われるが、それを裏付ける結果になっている。
 私たちは、各学校において、何が「条約」に関する学習・啓発活動の推進を妨げているのかを、まず明らかにしていく必要があると考える。「条約」第42条には、「締約国は、この条約の原則及び規定を、適当かつ積極的な手段により、大人のみならず子どもに対しても同様に、広く知らせることを約束する。」とある。各学校において、「条約」について知ることから始めたいと考える。


2.「ゆっくり休みたい」「遊びたい」という声をどう受け止めるか。
 [問4]の結果から言えることは、子どもたちが「ゆっくり休むこと」(43.3%)「遊ぶこと」(43%)を特に大切にしてほしいと思っているという事実である。また、中学2年生について言えば、[問3]で「守られていない」とする項目で最も多かった答えが、「ゆっくり休むこと」(20.6%)であることも注目される。
 このことは、2通りの受け止め方ができる。一つは、この結果をそのまま読みとると、今の子どもたちが絶えず何かに追いかけられているような状況の中で生活しているのではないか、ということである。もう一つは、子どもたち自身の「ゆっくり休むこと」「遊ぶこと」に関する意識自体が、時代とともに変化してきていることの現れとのとらえ方である。つまり、子どもたちの生活自体にはかつてよりも余裕があるとも考えられる状況にも関わらず、子どもたちの時間に関する感覚や、「遊ぶこと」「休むこと」に対する意識(認識)が変わってきているという見方である。
 いずれにしても、子どもたちの要求の背景を解き明かしていくことが大切ではないだろうか。それができるのは、子どもを目の前にしている教職員を中心とした、保護者を含む大人たちである。


3.「子どもの意見を聞いて学校のいろいろな活動を決めてほしい」と言う声をどう受け止めるか。
 [問7]の「子どもの意見を聞いて、学校のいろいろな活動を決めてほしいと思いますか。」という問いに対して、「とてもそう思う」「少しそう思う」と答えている子どもがほぼ8割にのぼっている。「子どもの意見を学校の活動にどう生かしていくか」については、学校や学級の実態や個々の状況・場面により一概にはいえないが、どのような取り組みや活動をすすめるのにも、子どもたちがその意味(意義)を理解したときに大きな成果が得られることは、周知のことである。
 私たち教職員に今求められているのは、一人一人の子どもと向き合いながら、子どもの思いを受け止めようとする姿勢であり、そのような中で子どもとの信頼関係を積み上げていくことではないだろうか。


4.『子どもの権利条約アンケート』結果をどう活かしていくか。
 今回のアンケートによって、回答を寄せてくれた子どもたちのおよそ8割が「条約」を知らないことが分かったたが、それ以外の部分でも、今回のデータは貴重な示唆を私たちに与えている。
 例えば、[問3]の回答によって、およそ7%の子どもたちが、「親から暴力やむごい扱いを受けないこと」に関して、自分が「守られていない」と答えている事実がある。昨今、孤立化する子育ての状況も広がる中で「児童虐待」ともとらえられる実態が浮かび上がってきている。そういった点からしても、この結果は、(子どもたちのこの問いに対する認識の差はあると考えられるものの)決して無視できるものではない。

 このアンケート結果を活かし、子どもの実態をもう一度振り返っていただく中で、今後の学校や家庭のあり方について話し合うきっかけにしていただければ幸いである。


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